人事の今を知る、課題の先を読む。

企業にとって「人材」は最も重要な経営資源です。そして、その人材が最大限のパフォーマンスを発揮するためには、心身の健康が土台となります。近年、多くの企業が「健康経営」の推進に力を入れているのは、単なる福利厚生の拡充ではなく、従業員の健康を“経営課題”として捉え、持続可能な成長を支える投資であると認識しているからです。

働き方の多様化、長時間労働やメンタルヘルスの問題、少子高齢化に伴う労働力不足など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。その中で「健康を軽視する組織」は、人材の定着・活用が難しくなり、結果として生産性の低下や離職率の増加という経営リスクを抱えることになります。

一方、健康経営を実践する企業では、従業員満足度やエンゲージメントの向上、欠勤率や医療費の削減、生産性の向上といった具体的な成果が報告されています。たとえば、味の素株式会社では、健康施策とエンゲージメント向上施策を連動させた取り組みにより、従業員の定着率と業績向上の両立を実現しています。

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さらに、経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」などの導入により、取引先や投資家、就職希望者からの企業イメージ向上にもつながっています。ESG投資や人的資本開示が重視される中で、健康経営は“経営の質”を示す重要な指標となりつつあります。

特に人事部マネージャーにとっては、健康経営は**戦略的HRM（人的資源管理）**の柱のひとつです。ストレスチェック、残業管理、健康診断結果の活用、メンタルヘルスケア、eラーニングを通じた健康教育など、日常業務と密接に連携する領域だからこそ、先手を打つことが重要です。

「健康であることが、最も強い競争力になる」──それは、個人にも組織にも言えることです。これからの人事は、評価や配置だけでなく、**「健康をデザインする力」**が問われる時代に入りました。健康経営は、未来の企業価値を高める土台であり、人事戦略の中核に位置づけるべき取り組みなのです。